02
「あ!あやこちゃん、危ないよ~!私が取ってあげる!」
「あ…
さん。すみません」
物置部屋に人がいる気配がしたからひょこっと覗いたら、あやこちゃんが踏み台をつかって高い位置にある箱を取ろうとしていたので、お手伝いを買って出る。何か家事手伝いに使う道具でも入っているのか、ひょいと持ち上げてみると箱は少し重い気がした。こんなのが万が一あやこちゃんの頭に落ちてきちゃったら大変だ。頭についてるおくちのほうも怒るに違いない。私は目当てのものをあやこちゃんに渡すと、きょろきょろと自分の目線で見える周囲を見回した。
「あの…ありがとうございます。助かりました」
「あっ!本当!?じゃあね、じゃあね、褒めてくれると嬉しいなー!」
「……はい? あ…わかりました」
お辞儀をするように頭の位置をちょっと下げると、あやこちゃんが手を伸ばして遠慮がちにナデナデする。それだけでぐんとご機嫌になった。充電満タンになった気持ちだ。私は顔を上げると、もう一度物置を見渡す。
「しばらくお掃除してなかったよねえ。なんだか上の方ごちゃごちゃしてるし、整理整頓しちゃおっかな!ここらへんのもの、下にあった方が便利?」
「はあ、…え…でも…」
「ついでついで~!私やっとくからお仕事戻ってて!」
やる気満々!のジェスチャーで両腕をむん!っとさせる。申し訳なさそうにされたけど、べつに今時間あるし、ついでだし、終わったらあやこちゃんに褒めてもらえそうな気がするのでオールオッケーだ。あやこちゃんがぺこりと頭を下げてお仕事に戻ったのを見送って、私は早速、高い位置、奥の方に押し込んである荷物を見て―…それからさっきあやこちゃんが使おうとしていた踏み台を見下ろす。
「………」
全然、正直手が届く位置だった。けど、あやこちゃんはこれを使ってもぎりぎり届くくらいの高さだったなーと思い返したら、なんだか、ものすごく…気持ちがしょぼんとした。私には必要ないそれに、そうっと片足を乗せる。足場の安定感を確かめてから、もう片方の足も乗せてみる。
「わっ!高~い。……うん、要らないかぁ」
天井とお友達になってしまう。はあー、と溜息を吐いて下りようとしたとき――開けっ放しだった入り口にふと視線が向かう。人の気配がしたから。相手も、たまたま前を通ったときにこっちを向いたらひとがいて目が合った、みたいな感じで足をとめていた。うん、目が、あった。谷裂と。
「……」
「…」
「た、」
「何をしている」
「……、…たか、くて…取れないなーって…台に乗ってみたんだけどぉ~…」
「……十分届くだろう」
谷裂の視線が、私が乗っている台に向かった。そんなもの使わなくても、届くだろう、っていう顔だ。変なものを見る目で見られている気がする。私は無言で、台から降りた。はあ~っとわざとらしく深い溜息を吐く。もし私があやこちゃん(の身長)だったら、今、手を伸ばして取ろうとしているものが届かなくて、うえーん取れない~ってじたばたして、偶然覗いた谷裂が、ふんっ仕方ないなって言いながらも代わりに取ってくれたんだろうか。そんなこと、たしかめようがない。まったく、わからない。
→