「谷裂と一番話が合う…主に肋角さんの話だけど」
「……なんだ、いきなり。肋角さんがどうした」
「私、谷裂といるのが一番楽しくてラクかもしれないなあ」
もう、なんか、仲間みたいな。同志みたいな。友達のようでもあるし、そんなもんじゃない気もするし。しみじみ、うんうん、唸って考え込む。私にとってのこの、谷裂の存在。なんだろう?ふさわしい、関係の名前とか、感情の名前とか、なんだろう?いつも通り肋角さんの話でも始まるのかと私の言葉を待っていたところに、「谷裂といるのが一番いい」みたいなことを言われて、谷裂が眉を顰める。
「いや、私谷裂のこと好きなのかなーって思って」
「……何?」
顰めていた眉が、もっともっと寄って、しわが深く刻まれる。けど、思っていたような反応とは違った。いきなりなんだ!と真っ赤になって狼狽えられた方が、谷裂っぽかったのに。谷裂は私の言葉に、心底へんなものを見るような顔をして、そうして、当たり前のように言った。
「お前が慕っているのは肋角さんだろう」
うん、たしかに。それは、そう。当たり前。私の世界でいっちばんかっこよくて、素敵で、あこがれで……うん、たしかにそう。「そうだよねえ、うん、そうそう」自分でも谷裂の言葉にうなずく。谷裂もフンと鼻を鳴らしながら、やっぱり、当たり前のことみたいに。うーん、そうだよな。自分でも、なんでさっき口からそんな言葉が飛び出したのかわからない。いや、でも、でもさちょっと待ってよ。
「肋角さんのことは大好きだよ?大好きだけどさ、そういうのじゃなくってさ」
「……」
「なんて説明したらいいんだろうなあ、また別の次元っていうか…」
「意味がわからん」
さっぱりだ、という諦めて放り投げるような物言いに、私はもだもだ、なんだか納得がいかなくて口を尖らせる。だからさあ、と言いかけたとき、ふと、聞きなれた声が耳に入った。――少し頼まれてくれないか。肋角さんの声だ。煙草の買い出し係を探している。私も谷裂も、ほぼ条件反射のように「なら自分が!!」と声をあげた。顔を見合わせる。
「えぇ、私も行きたいんだってば!谷裂、一緒に二人で行こうよ」
いつもの提案。いつもの流れだ。谷裂は以前ほど「俺一人で十分だ!」みたいなトゲトゲした返事はしない。ふん、と小さく鼻を鳴らしてから、「さっさと行くぞ」と急かすのみだ。やった!と機嫌良く二人で並んで館を出る。谷裂も、最近は私と一緒にいるのを楽しんでたりするんだろうか。それとも逆に、肋角さんの良さをわかるのは自分だけでいいとか、思ってるんだろうか。うーん、そうだとしたら、なんか、もやもやするな。なんか、へんなかんじだな。肋角さんのことが好きな谷裂だから好きなのかな。うーん、なんかちがうな。やっぱり、私谷裂のこと好きなんじゃないかなあ。