「……おい、さっさと電気消せよ」
「んー、もうちょい」
「あ?」
「いいよー田噛先に寝てて。私まだこれ読んでるん…」
「消すぞ」
「なんでよ!?」
「明るいと寝れねーだろ」
「うっそだ~!ダウト~!田噛そんな繊細なつくりしてないでしょ!いつでもどこでもおやすみ三秒でしょ!明るくてもうるさくても床でも寝るでしょ!」
って早口に言ってけらけら笑ったら本当にぱちんと部屋の電気が消された。横暴か?たしかに部屋の主は田噛だし、私はただベッドを半分お借りする身でありますけれど。ちぇーと口を尖らせて、暗闇の中で本を閉じた。田噛はさっさと布団にもぐると、私に背を向けて眠る体勢に入る。田噛、一緒に寝るときいっつも最初背中向けるんだよな。だから一緒に寝るときいっつも私が最初にやることといったら、田噛がこっちを向くようにちょっかいをかけることだ。
「田噛クンさあ、『電気消すぞ』じゃなくて『早く一緒に寝ようぜ』ってかわいく素直に言ってよ~」
「寝ろ」
「いや聞いてる?私の話」
「うるせー寝ろ」
あ、これ全然こっち向かないな。ちょっとうぐぐとなりつつも、懲りずに田噛の背中に話しかける。人差し指でズビシズビシつっつきながら。
「田噛明日何時に起きんのー?」
「可能な限り寝る。つーか背中つつくのやめろ」
「まじ?私昼間平腹とゲームする約束してんの」
「はあ?」
「起こさないように頑張って静かに部屋出て行くわ。田噛は夕方まで寝てんの?」
「……背中やめろ」
「…いま背中になに書いたか分かった?」
「アホ」
「ちがうし!」
そこまで会話して、やっと田噛がこっちを気だるげに振り返った。勝った。田噛くん振り向かせゲーム勝った。暗闇に浮かぶ不機嫌そうなその顔に、にこーっと笑う。田噛がもっと眉を顰めた。
「……お前な」
「うへへー、こっち向いた。せっかく二人一緒に寝るんだから、すぐ眠んないでもうちょっと相手してよー、たがみー」
「……」
「おっなんだその『ハア?』みたいな顔!恋人にしていい顔か?布団の中でいちゃいちゃしたくないのかー!?」
「…なかなか布団被らねーで、被ったかと思えばいきなり他の男の名前出すバカは誰だよ」
「……、お、おう……私…?」
そーだよおまえ以外に誰がいんだよ、みたいな顔して田噛が舌打ちした。いや、でも田噛のその言い方じゃあ、やっぱり早く一緒にお布団被りたくて電気消したみたいに聞こえるし、いくら相手が平腹でもやきもちやいてるような言い方に聞こえるし。っていうか多分実際、そうだし。そんなの、だって、田噛が素直じゃないから、わかりやすく言葉にしてくれないから、背中に描いたハートに気付いてくれないからじゃん?(まあ素直じゃないところが可愛いし、ハートに気付いてようが気付いてないふりするような男なのはわかっているんですけど)
「いやしかし私より田噛のほうがよっぽどいちゃいちゃしたがっている事実にびっくり」
「……」
「ウワ、めっちゃ不機嫌な顔」
「…そうだな。するんだろ、『いちゃいちゃ』」
「ウワ、待って田噛、わぷっ」
「むかつく」
布団も田噛も覆い被さってきたその中で、不機嫌そうな、ちょっと拗ねたような声を聴く。きっと外から見れば布団のおばけにぱくっと食べられちゃったみたいに見えるだろうな。こんな状況でそんなこと言ったら子供っぽいだとか雰囲気ぶち壊しだとか言われるかな。でも田噛、そんな私のことが大好きだもんね。(とりあえず、明日平腹に謝ろ。たぶん明日の朝、田噛と布団が私を離してくれない)