「気になったんだけど……斬島はその……どこで、ああいうこと覚えたの?」
「ああいうこと?」
「う、うん。なんか、この間の、ほら…いろいろあったじゃない!?あのとき、なんか触り方いつもと違ってたし……」
興味本位というか、なんとなーく聞いてみただけ。だけど、事実ちょっと気になっていた。恋人として過ごして、じゅうぶん毎日幸せなのに、ある日突然「夜の営み、満足させられていない気がする…」って言いだしたときのこと。或る種えらいめにあったわけだけど、自分がすごーくすごーく愛されていることを実感できた出来事ではあった。けど、思い付きでやり方を変えるものでもないだろうし、何かしら参考にしたものが、あったんじゃないかなあ…なんて。
私の質問に、斬島はちょっときょとんと考えてから、ああアレか、みたいな何でもない感じで話し始めた。本当、なんにも恥ずかしいことではないみたいに。
「皆に相談したんだ」
「……エッ?」
「行為の際に相手をもっと気持ち良くさせる方法は何か知らないか、と。自分のやり方でに不快な思いをさせていないかの確認も兼ねていた」
「エッ……え?皆って……え、皆?」
「ああ。そうしたら平腹や田噛が本と映像を参考にするといいと助言をくれて、実際にそれらを貸してくれたんだ。なかなか勉強になった」
「……、…」
「谷裂は怒ってそれ以上話を聞かずにどこかに行ってしまったが」
おそらく、ちょうどそのときの谷裂くらい今自分の顔は赤いと思う。その場を見てないけど。想像するだけでいたたまれない。顔を覆って突っ伏した私に、斬島が不思議そうに「どうした?」ってきく。どうしたっていわれても、どうしたもこうしたもない。いや斬島らしいけど。斬島らしすぎる。
「う、うぅん……なんでもない…。そっか、本とか…そういうの、なんだ」
「ん?ああ」
「……そ、っか」
「?」
それまでの、なんともいえない居た堪れなさとは別の、もやもやっとした感情が胸の中に生まれて、それがぐるぐると渦を巻いていた。なんか、なんだろうな。うまくいえないけど…口にするのはあんまり、なんだろうけど。斬島に顔を覗きこまれて、ぽろっと、つい、零してしまった。
「や、うん、なんか、すごーくくだらないことなんだけど……」
「どうした」
「そういうの、女の子の裸とか、載ってるのかなあ…って」
「……」
「斬島が……私以外の女の子の体見るの、なんか……そういうのじゃないってわかっててもちょっと…」
「…」
「やだ、かなあって……」
「……」
「ご、ごめん!わーっ今の無し!変だよね!?めんどくさいよねこんな…」
「……、…」
「き…斬島?ひいた?」
「いや違う、すまない。あまりのいじらしさに言葉が出なかった」
「んん!?そういわれるとすごくはずかしいな!?」
大真面目に、真剣に。斬島はいつもそうだけど、本当に真っ直ぐ恥ずかしげもなくそういう言葉をくれる。いや、私すごく恥ずかしいことを言ってしまった気がする。名前も顔も知らない女の子に嫉妬するとか。斬島だってその女の子のこと、会ったこともないし知らないのに。でもなんか、イヤだった。自分以外の女の子の裸を見て、もしかしたらこう、きれいだなとか興奮するなーとか、思った…かも、しれない…斬島を想像し、たく、ないな!?ああもう!って自分に呆れていたら、斬島がまたまた真剣に、私の目を見て言う。
「とりあえず、抱きしめてもいいだろうか。今、そうしたくて堪らないんだが」
「あまりのいじらしさに言葉が出なかった」ので、その代わり、らしい。目をぱちくりさせつつ、ほとんど無意識にこくりと頷いた私を、斬島は宣言通りぎゅっと抱きしめる。
「嫌な思いをさせたなら謝ろう。すまない。だが俺は……お前以外の女の体を見ても、何も思わなかった。それは事実として伝えておきたい」
「き、斬島……」
「行為の参考にするために見てはいたが…特にその人物のからだ自体に興奮はしなかったな。考えもしなかった」
「そっか……うん、斬島がそういうならそうなんだろうなあ…」
「と、いうより……他の女の体を見ても、お前のことを考えてしまう。これがお前だったらどんな反応をするのか、と想像して……お前の体の感触を思い出し興奮して自」
「それは事実を伝えすぎだよ斬島!?」
思わずつっこんでしまった。ぎゅっと胸に押し付けていた私の体を一旦離し、顔を見て、「そうか?」となんでもないように言う。ああ、斬島だ。やっぱり、斬島らしい。変なやきもちやいちゃったな。斬島、私のことすきなんだもん。こんなに好きなんだもん。いや、うん、でも、わかってたってもやもやっとしちゃうのはしょうがないよね。私だって、好きなんだもん、こんなに。変なやきもちやいちゃうくらい、好きなんだもん。
「……う~~、でもみんなに相談したのかあ……そうかぁ…」
「嫌だったか。すまない」
「う、イヤっていうか…恥ずかしいよ~……みんなにどんな顔して会えばいいんだろう…絶対みんな『こいつらそういうことしてるんだなー』って思うよ……『この間言ったこと実践したのかなー』とか…嫌でも顔見たら想像しちゃわない…?考えすぎかな……」
「む……そうか。確かに嫌だな」
「い、いやだよね!?」
「ああ……その想像の中でが裸かもしれない。想像でも、お前の裸が他の男に見られるのは嫌だな」
「……、……」
「どうした」
「き、きりしまあぁ…っ!!」
だってそれくらい君がほしいぜんぶ