「それで、そのときに――……」
おれと視線が絡んで、ぱたりと彼女のその声がやんでしまった。今日あった大変だったこと、おかしくて笑いそうになったこと、食べたおいしいもの、そんな話をしていた最中。楽しく喋ってくれていたと思ったのに、何かに引っかかったように彼女の口が閉じるから、おや、と怪訝に思って首を傾げる。
「どうかしたのかい」
「……木舌、聞いてた?」
「もちろん」
「ほんとに?」
「ほんとに。どうして?」
「だ、だって、ずーっと私の顔、にこにこ見てるじゃない……」
言いにくそうに、少し恥ずかしそうに、そんなことを言う。おや、参った、それは図星だ。どんな話をしていても、話している様子が可愛くって、つい見つめてしまっていた。だけどもちろん、話の内容を右から左へ聞き流しているわけじゃない。ちゃんと聞いているつもり。
「そうだね。でもほら、ひとが話しているときは、ちゃんとそのひとの目を見て聞くように、って教わっただろう?」
「……教わったかしら。そうだとしても、そんなに見つめるもの?」
「教わったと思ったけどなあ。肋角さんに」
「そ……そう言われるとそんな気がしちゃうじゃない!」
もう、とむくれて、グラスに入った綺麗な色の液体をひとくち飲む。そんな様子すら、かわいいなって、片肘ついて笑いながら眺めた。肋角さんの名前を出すと、なんだって信憑性が増すものだ。
「さっきのお話は、おしまい?続きはいいのかい?」
「おしまい。なんでもない、ちょっとした話だったもの」
「そっか。じゃあ、次はおれが話そうかな」
「ん、どうぞ。木舌の番ね」
「うん。おれが見つめてもらう番」
えっ、と飛び上がるような声を出して、顔を赤くさせた。だからおれはにこにこ笑って、待ち構えてみる。ちょっと納得いかなそうに口を尖らせていた彼女も、咳払いした後、じっ、とおれを見上げた。「さあどうぞ、受けて立ってあげる」という意気込みを感じるけど、おれからの眺めだと、上目遣いに見つめられて、ああやっぱりかわいいなって、そう思ってしまうんだよなあ。
//おしゃべりしようよ