「……木舌は、」

 もう眠ってしまっていると思っていた。おれの腕の中での小さな声がして、その髪を撫でながら耳を澄ませる。なんだい、と優しく尋ねたつもりでも、彼女はその言葉の続きを少し躊躇った。

「私がもし、生きてる人間でも、好きになったと思う?」

 どこかで出会って、恋に落ちると思う? そう尋ねられて、おれはすぐには答えを口に出せなかった。

「『どんな形で出会っていても君を見つけて好きになるよ』とか…言ってほしいって思う女の子もいるらしいのよ」
「…は違う?」

 はおれの腕の中で、こくこくと首を縦に動かした。逆だもの、って言いながら。

「私、絶対に好きにならないでほしいって思ったの。人間って簡単に死ぬし、生き返らないし、長くはもたないし。そんなの好きになったらきっと木舌が悲しいから、絶対嫌」

 きっぱりとした声に、おれは少し驚いた。でもすぐに、口元が緩む。そっか、そうなんだね、って。おれのためなんだね。おれはきっときみのそういうところが好きなんだろうな。

「困ったなあ……好きになってしまうかもしれないなあ。そんなに優しい子に出会ったら」
「な……なんでよ!? ダメだって言ってるでしょ! 絶っ対ダメ!」
「はは、うん、でもそうだね。おれは、今のこの形で出会ったが好きだから……もしもの話は考えるのが難しいかな」

 おれの顔を見つめるに微笑んで、その額にキスをひとつ落とした。ずっと一緒にいたいなあ、と思ってしまう自分が不思議だった。願わなくても、ずっと一緒に決まっているのだから。おれたちは、そういうものだ。