「やっと帰ってきたのね!木舌!随分と遅いお帰りじゃない!」
「ああ、ただいま、。心配かけてごめんね」
「心配!?心配といったの、今!?誰があなたの心配なんてするものですか!私はね、木舌。とってもとっても怒っているのよ!今回のあなたの失敗を嘆いて!腹が立っているの!」
「いやあ、面目ない。返す言葉もないな」
「そうよ!あなたが任務中にヘマをしたせいで他の獄卒にも迷惑が掛かったんだから!非番の人間まで駆り出されたんだからね!本当、迷惑にもほどがあるわ!」
、べつに俺は気にしていないし、木舌だって何も」
「佐疫は黙ってて!!」
「はは、いいんだ、佐疫。彼女の言う通りだし」
「たかが女の亡者一人捕まえるくらいで何を手こずっていたのやら!連絡一つも寄越さずに!」
。木舌は亡者に目玉を取られてまともに連絡を取れるような状況では」
「斬島は黙ってて!!」
「いやあ、本当斬島には感謝してるよ。目玉が戻ってきて良かった良かった」
「……っていうかコイツ半泣きで木舌からの連絡待ってたん」
「田噛は黙ってて!!!」
「うん、大丈夫だよ田噛。分かってるから」
「だいたいいつも木舌は亡者に甘いのよ!戦闘を避けようってめったに武器も持ち歩かないし話し合いで解決しようとするしそれに今回の亡者はなかなかに美人だったみたいじゃない余計に油断していたんでしょう!?鼻の下を伸ばしていたんでしょう!?」
「うーん…そうだなあ、あんまり否定はできないかもしれないなあ…」
「何?それは聞き捨てならない。俺も前からお前のその甘さには」
「谷裂は黙ってて!!」
「(ええ…谷裂はべつに木舌庇ってないのに…むしろの援護だったのに…)」
「本っ当迷惑だわ!人騒がせが過ぎるのよ!あなた一人の為に一体どれだけの人間が面倒に巻き込まれたと思っているの!あなたがさっさと亡者を回収していればこんなことにはならなかったのよ!目玉を取られたですって!?連絡が取れない状況にあったですって!?そんなの言い訳なんですからね!私達はべつに目玉が取られようが手足を引きちぎられようが時間が経てば再生するのだしそんなのはべつになんの心配の対象にもならないのよ!ええ本当、これっぽっちもあなたの身なんて心配してなかったんだから!ただ腹が立ってただけなのよ!いらいらしながらあなたの帰りを待っていただけなの!へらへら笑いながら帰ってきたらぶん殴ってやろうって思って鼻息荒く待っていたんだから!本当、予想通りあなたはへらへらしながら帰ってくるし!呑気にただいまなんて言うし!本当、ほんっとう、ばかじゃないの…っ!」


「なー、なんで泣いてんの?」
「平腹は黙っててっ!!」

 わっと平腹に向かってが叫んで、平腹がむっと唇を尖らせて、なんで怒ってんだよとぶつぶつ呟いた。これには斬島も平腹の隣で不思議そうにしていたけれど、なんで泣くんだと彼は口にしなかったので、にまた怒られることはなかった。佐疫が眉を下げて苦笑して、おれの方をちらりと見た後、「じゃあ、俺達は先に戻るね」とその場を後にする。まだ納得の行っていない顔の平腹を谷裂が引き摺って、田噛が欠伸を噛み殺しながらその後に続き、斬島はおれたち二人を気にしてそれとなく振り返ってくれたので、心配ないよという意味を込めておれは笑顔で手を振る。
 さて、皆がいなくなったところで、おれは目の前の小さな女の子と改めて向き合った。元からかなりの身長差があるし、今は背中を丸めて泣いているので、いつも以上に小さく思えて、向き合うっていうよりは、見下ろす。俯いていて顔も見えないし。この子はいっつも強がっているくせに、一度泣き出すと爆発してしまうので、なかなか涙は止まらない。俯いて、両手で何度もぐしぐし拭っているけれど、やっぱり止まらない。

「そんなに強く擦っちゃ駄目だよ、
「うるさい!黙って!ばか!!」
「うーん…こればっかりは黙っていられないなあ」
「黙って!しゃべらないで!私の名前呼ばないで!私の前からいなくなって!」
「いなくなっていいの?」
「いいわけないじゃない!!バカ!!ばかばかばか本当にバカ!!」


 もう本人も何を言ってるのか分かっていないんだろう。いつも思うんだけど、毛を逆立てて威嚇する猫みたいで可愛い。おれは少し笑ってしまって、その声を耳に拾ったが顔を上げてキッと睨んでくる。泣き顔を見られたくなくって俯いていたんだろうに、思わずこっちを見てしまったらしい。懸命に睨んでくるんだけど、涙の溜まった瞳で睨まれても、全然怖くない。むしろ可愛いんだから、逆効果なんだけどなあ。おれは彼女の背中に腕を回して、引き寄せる。ぽすっとなんの抵抗もなくおれの服に顔をうずめて、それどころかぐりぐりと顔を押し付けて本当に猫みたいだ。(後から聞いたらこれは涙と鼻水でおれの服をぐしょぐしょにしてやろうっていう嫌がらせだったみたいだけど、まあ全然気にならなかったので結果オーライだった)(おれを喜ばせるだけの、彼女の一生懸命な拒絶が愛しい)子供にするみたいに、ぽんぽんと背中を叩く。そうされると悔しそうに、おれの腕の中で「う~」って唸った。

「心配掛けてごめんよ、
「…ほんと心配したのよばか」
「うん、そうだね。本当におれはバカだね」
「ばかよ、世界でいっちばん、バカ!」

「うん、ありがとう。ただいま」


だいすきっていう
内緒話を待ってる

おれね、君の「ばか」が「好き」って聞こえるんだよ。重症かな