「……えっ? な、なに?」
「おや。おひとつどうぞ、って? くれるみたいだよ。貰ったら?」
子供たちに風船を配っていたおどけた格好の大道芸人が、私と目が合ってずいっとそれを差し出してくる。木舌は他人事みたいに横でにこにこしてるけど、こんな、子供たちしか喜んでないようなものを人前で素直に受け取るのが恥ずかしいってわからないのかしら。
「私は、べつに……いいったら! 遠慮しておく!」
「ははは、そうかい? じゃあ、代わりにおれが貰ってもいいかな」
エッ、とびっくりする私なんてお構いなしに、木舌がその人物ににっこり笑った。すると相手は「おお!」と何か納得して嬉しそうに、いそいそと別の風船を選び始める。次に差し出されたとき、二本の糸が絡まったまま、風船は二つになっていた。もう一回エッ、ってなる私に構わず、木舌はお礼を言って受け取った。じゃあ行こうかって歩き出す。風船、持ったまま。
「は、恥ずかしくないの? これ、ハートの形よ? か…かわいいのよ?」
「ん? 恥ずかしくはないけど……でも、そうだなあ。一つ
が貰ってくれたら助かるよ」
「……ば、ばかね、要らないなら要らないって言ったらよかったのに! 一つ貸して!」
どうぞ、と差し出された細い糸を掴む。糸の先を見上げて、ちょっと、気持ちまでもがきゅんと上を向く。部屋に、持って帰っても、いいかな。なんてそわそわしていると、木舌に名前を呼ばれる。「かわいいね」って。確かに可愛い風船だったから、私も思わず「そうね」って返した。視線を木舌に向けて、今度は私から木舌を呼んだ。木舌、あのね、「……ありがと」
ほんとはちょっと欲しかった。